2010年9月号 案山子祭り

2010.09

かかし(案山子)。古典的には田圃を害獣から守るための人形。竹や藁でつくられ、鳥獣に対して人間が農作業をおこなっている(人間がいる)ように見せかけることが目的。しかし、鳥たちにも学習能力があり、動かない案山子は無害なものと認識され、本来の目的は果たされなくなる。現代においては巨大な目玉を模した風船や、風車・銀色のテープなど、風や光などによって不規則な動作をするものが工夫されている。
案山子は、民間習俗の中では田の神の依り代であり、霊を祓う効用が期待されていた(鳥獣害には悪い霊が関係していると考えられていたため)。また、ただ突っ立っているだけで何もしない(=無能な)人のことを案山子と評することがある。確かに案山子は積極的に鳥獣を駆逐することはしない。しかし農作物を守るという人の代わりの大切な役割を与えられていた。
さだまさしの「案山子」は、都会で一人暮らしをする弟を、雪の田圃にぽつんと立つ案山子になぞらえ、寂しい思いはしていないかと気遣う内容のヒット曲。案山子は生身の人間の代替であり、それはそのまま人の心の依り代的な存在なのである。そんな案山子に生身の人間が愛着を感じてか(?)今年も収穫の時期と合わせ、全国各地のいわゆる田舎で「かかし祭」が行われる。

イラスト/円野町かかし祭り

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